なぜこんな簡単なことが森達也には分らないんだ?

oiroke2005-08-10

『世界が完全に思考停止する前に』森達也角川書店2004)を読んだ。
 
マイケル・ムーア『ボーリング・フォー・コロンバイン』を評価できない理由として、森さんは以下のように発言している。

アメリカ人が銃を手放せない理由を、かつて黒人や先住民族を加虐したことに由来する恐怖感で説明したことには、全面的に同意する。」
しかし「ラストにおけるテーマの矮小化には唖然とした。要するに銃を持た
ない正義が、銃を持つ悪を声高に断罪するだけなのだ。」(p160)

 
つまり「善悪二元論」だからダメだ、というのである。
その辺の構図は納得できないことも無いが、
でも、いちばん肝心なことを忘れている。――
 
マイケル・ムーアは拳銃の所持を否定してなんかいないぞ!
 
安全な国として好意的に紹介されるカナダも、実は合法的に拳銃を所持出来ることはアメリカと同じ。なのに、アメリカだけが突出した銃犯罪国家なのである。――これって異様でしょ?
それに対する回答として、ムーアはアメリカの貧困や恐怖を煽るメディアの存在(特に黒人による犯罪 について)を指摘した。「アメリカは恐怖に踊る」(バリー・グラスナー著)参照。
つまり、拳銃を使わないではいられないように仕向ける社会のあり方に、根本的な問題があるんだよ、と言っているわけである。
実にシンプルな主張でしょ?
スーパーで銃弾を売るのを止めさせたのも、自分の家の近所のコンビニで同じことをやっていれば、それがほって置いていいような問題じゃないことは、誰にだって理解できるハズである。
そしてラストに登場する、全米ライフル協会会長チャールトン・ヘストンがもらす言葉が決定的だ。
 
「(銃を持つのは)アメリカにはいろんな人種がいるからだ」
 
要するに、彼は色の違う人間を敵だと思っているのだ!
ここまで人間観が歪んでしまっていれば、アメリカの銃社会が病んでいくのも当然というべきだろう。

だいいち、ムーア自身がライフル協会の会員だって気づかなかったのかな?
 
 「どうしてこんなことになってしまったのか? 答えは単純だ。僕らが選択したからだ。」(P32)
 
この言葉には共感する。でも、なんでムーアにだけはこんなに敵意剥き出しなんだろうね?